当記事の要点
- GPTsを使えば社内ポリシー組込のセキュリティチェックボットを簡単構築し業務効率化を後押し
- 国内では大企業53.8%がGPT試用済も72%が利用禁止検討とリスクへの警戒強い
- モデル改善OFFや禁止語検知などGPTs標準機能で外部流出・誤情報を多層防御
- 導入後は30-90日評価とKPI追跡、ナレッジ更新でPDCA回し安全運用を継続
こんにちは、FreedomBuildの駒田です。
もし今あなたが「社内でChatGPTを使った業務効率化を進めたいけれど、セキュリティポリシーの遵守が不安で一歩踏み出せない」という状況にあるとしたら、本記事はまさにその悩みを解消するためのガイドです。
GPTs(ジーピーティーエス)を活用すれば、単なる問い合わせ受付だけでなく、組織内の利用ルールや情報保護を自動でチェックしてくれるAIチャットボットを構築できます。
結果的にヒューマンエラーを削減し、従業員が安心して業務を効率化できる仕組みが整うのです。
それでは早速、背景となる日本企業の現状から、問題点・解決策・具体的な実装ステップまで順番に見ていきましょう。
日本企業のAI導入が加速する背景
企業や公共機関がAI活用を検討するペースは、ここ数年で急速に加速してきました。
特にGPT系モデルの登場で可能性が一気に開け、ビジネスシーンでも「企画書のドラフト作成」「トラブルシューティングのアシスト」「ナレッジ共有の促進」などの具体的な成果が目立つようになっています。
この流れは日本国内でも例外ではなく、2023年時点で大企業の約53.8%が、ChatGPTのようなAIツールの試用もしくは導入を既に始めている(Persol Holdings, 2023)と言われています。
一方、中小企業やスタートアップではまだ22.6%程度の利用率にとどまり、組織規模によるAI導入スピードの差が顕在化しています。
日本企業がここまでGPTを含む生成AIに注目する背景には、大きく以下の要因が挙げられます。
まず少子高齢化による人手不足対策。
高度な知識や定型外タスクが多い現場でも、AIに任せられる部分は少なくありません。
次にイノベーションと業務効率の両立です。
AIは従来の業務プロセスを自動化するだけでなく、新たな付加価値創造の源として期待されています。
その一方で、初期段階から「セキュリティ」や「内部統制」への懸念も根強く、社内規程や法令順守のために利用を制限・禁止する企業も一定数存在します。
実際、2024年のBlackBerry社の調査によれば、日本企業の約72%が「ChatGPTのような生成AIを禁止するか、禁止検討中」と回答しており、データ漏えいリスクや誤情報の混入を理由に挙げる声が多く見られました。
しかし国内の経済全体を見渡すと、AI需要は年を追うごとに成長し、2024年には国内での生成AI市場規模が1,000億円を突破し、2028年には8,000億円近くまで拡大するというIDC Japanの予測が発表されています。
加えて日本国内のChatGPTアクセス数も世界上位に位置しているため、組織が安全にAIを利用できる環境作りが整えば、さらに大きな伸びしろが見込まれます。
年次 | 国内生成AI市場規模予測(概算) |
---|---|
2024年 | 1,000億円超(IDC Japan) |
2028年 | 8,000億円近く(IDC Japan) |
日本企業において鍵になるのは、セキュリティポリシーとAI活用の両立です。
すなわち「AIで業務効率化したいが、情報漏えいや法令違反を絶対に起こせない」というジレンマをどう解消するかが導入スピードを左右します。
今まさにGPT活用が加速するこのタイミングこそ、確実な管理体制を整えつつ迅速にアクションを起こす絶好の機会と言えるでしょう。
このように、日本ではAI導入への期待が急速に高まる一方で、セキュリティやコンプライアンスへの配慮が大前提となっています。
次章では、このセキュリティ面に関わる具体的な課題をさらに掘り下げてみましょう。
AIへの注目と導入実績
企業がAI導入に際してまず注目するのは、どの程度の投資対効果が得られるのかという点です。
一般的に、大企業ほど先行投資をしやすいこともあり、試験導入から本格運用へと着実にステップを進めています。
一方で、人員リソースが限られる中小企業では、ツール選定や初期設定の手間が導入のボトルネックになりがちです。
最近では、GPTsのようにユーザーがGUI上で簡単にカスタマイズ可能なプラットフォームが登場しており、大規模なIT投資に踏み切れない企業にも門戸が開かれつつあります。
セキュリティポリシー重視の現状
国内のAI利用ガイドラインとしては、経済産業省や総務省が策定した「AI事業者ガイドライン」や、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発行する「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」が代表的です。
これらは個人情報保護法や業界固有の規制と合わせて運用されるため、企業はAI導入時に社内規程を整備しつつコンプライアンスを確保しなければなりません。
さらに、クラウド上のやりとりが前提となるChatGPTなどのサービスを業務で利用する場合は、「外部サービスへの機密情報の誤送信」を防ぐための対策が必須となります。
GPTsの拡張性と魅力
OpenAIのChatGPTや類似サービスのほかに、ChatGPTホーム画面から作成できるGPTsという存在が注目されています。
GPTsは自律学習こそしないものの、独自のシステムプロンプトやナレッジファイルを組み込むことで、自由度の高い専用チャットボットを手軽に作れる点が最大の強みです。
特に企業が独自のセキュリティポリシーやワークフローに合わせて運用する場合に、柔軟に権限設定やデータ解析機能をカスタマイズできるため、セキュリティの懸念を大幅に軽減できる可能性があります。
今が動くタイミング
大企業だけでなく、自治体や医療機関、あるいは従業員100名未満の中小企業に至るまで、AI活用の波は確実に押し寄せています。
ですがAI導入の失敗例としてよくあるのは、「先に使い方を決めずに導入し、情報漏えいリスクが表面化して結局利用禁止になる」というケースです。
適切な設計と運用ルールが整備されていれば、こうした問題は未然に防ぎつつ、業務効率を着実に高めることができます。
次の章では、なぜ企業内で「セキュリティポリシー遵守チェックボット」が必要とされているのか、その問題の根本を詳しく掘り下げていきましょう。
セキュリティ上の課題が生まれる理由
ChatGPTをはじめとする生成AIは、ビジネスの現場に革新をもたらす一方で、セキュリティリスクという新たな課題も顕在化させています。
特に企業利用においては、機密情報の誤入力や誤情報の無自覚な拡散、利用ポリシーの不備といった問題が複合的に発生しやすく、コンプライアンス違反や信用低下の引き金となるおそれがあります。
これらのリスクは、単にAIの技術的限界によるものではなく、導入企業側の運用設計や社員教育の不備によっても引き起こされる点が特徴です。
とくにGPTのように自然言語で柔軟な出力が可能なモデルでは、“使い方次第でリスクと価値の両方が変動する”という前提に立ち、企業全体で統制された利用ルールの設計と運用が求められます。
それぞれの課題を具体的に見ていきましょう。
機密情報の誤入力リスク
ChatGPTをはじめとした生成AIは、入力されたテキストをもとに自然言語を生成する強力なツールです。
しかし、業務利用においては、企業が機密情報の管理責任を負うという前提を無視できません。
社内では「顧客情報を外部サービスに送信しない」などのルールが定められていても、ユーザーがその意図を把握せず、うっかり機密情報をAIに入力してしまう場面は想定されます。
たとえば、新入社員の山田さんが取引先の個人データを含むファイルをコピーして、ChatGPTにそのまま貼り付けて質問してしまったらどうなるでしょうか。
もしこのやり取りがOpenAIのサーバーに保持された場合、意図しないデータ漏えいが発生する可能性もあります。
これはDLP(Data Loss Prevention)などの仕組みが導入されていたとしても、防ぎきれない“人の操作ミス”によるリスクです。
特に、GPTsのようなカスタムボットでは、こうした「想定外の質問」への対応ルールを事前に設計しないと、誤入力を防ぐ仕組みが働きません。
誤情報の無自覚な拡散
AIが出力した文章には、必ずしも正確性が担保されているわけではありません。
とくに、ChatGPTのようなモデルは、「もっともらしいけれど事実と異なる」出力(通称:幻覚/hallucination)をすることがあり、これを人間がチェックせずにそのまま顧客資料や社内提案書に流用してしまうと、後から大きな手戻りを招きます。
実際、国内のGPT導入企業の約7.6%が「AIの出力内容をそのまま使ってしまい、後で修正や謝罪対応に追われた」と回答しています(Persol, 2023)。
この課題は、出力内容の検証フローを整備していない運用体制に起因します。
忙しい現場ほど、ついレビュー工程がスキップされやすく、誤情報の流通を防ぐことが難しくなってしまうのです。
そのため、GPTsを利用する場合は「AI出力のレビューは必須」とする社内ルールを、チャットボットの設計段階から盛り込む必要があります。
ポリシー不在による混乱
現場からは「GPTは便利そうだが、使ってよい業務範囲が分からない」という声が多く寄せられます。
つまり、社内でAI活用のガイドラインが明確に共有されていないこと自体が、新たなリスクを生んでいるという状況です。
この不明確さが、社員ごとの判断バラつきを引き起こし、ある部門ではGPTを全面禁止、別の部門では無制限で利用というように、組織全体としての統制を損ねる原因になります。
- 機密情報の誤入力
繁忙期や教育不足により、知らずに社外秘情報を入力してしまう。 - 誤情報の無自覚な拡散
AIが生成した内容をチェックせず、顧客対応に使用してしまう。 - 利用ポリシーの不明確さ
使って良い業務とダメな業務の境界が曖昧で、現場が混乱する。
このように、「セキュリティポリシーの曖昧さ」がGPT導入を阻む最大の要因となっています。
次章では、これらの課題をGPTsのカスタマイズ機能でどう解決できるのか、具体的なアプローチを紹介します。
GPTs活用で実現する「守りと効率化」の両立
ここまで述べてきた課題を解消するために有効なのが、ChatGPTのGPTs機能を使った専用チャットボット構築です。
GPTsは、ChatGPTホームの「マイGPT」から作成できるカスタムAIチャットボットのこと。
独自のシステムプロンプトやファイルをアップロードする機能が使えるため、企業の運用ポリシーを組み込んだ仕組みを簡単に実装できるのが特徴です。
従来手法との比較
では、社内開発や外注でゼロからAIシステムを構築する場合と比べて、GPTsを使う場合の利点はどのように整理できるのでしょうか。
以下のような表を参照してください。
項目 | 従来型AIチャットボット | ChatGPTのGPTs活用 |
---|---|---|
導入コスト | 大規模システム開発が必要 | GPTプラスなど有料プラン契約のみでOK |
カスタマイズ性 | コーディング必須、改修に時間 | GUI操作で設定可、知識ファイルを手軽にアップロード |
データ取扱い | 外部API連携の都度契約処理 | GPTsのモデル改善チェックOFFでデータ学習回避 |
アップデート頻度 | 年に数回程度 | ChatGPT基盤のアップデートを自動享受 |
セキュリティ制御 | 個別設計が大変 | 法人向けプランのEnterpriseでは厳重なデータ保護がされる |
このように、GPTsなら「スピード」「柔軟性」「セキュリティ」をバランス良く両立できます。
また、自由に独自のシステムプロンプトを設定できるため、「セキュリティポリシー遵守チェックボット」としての機能も容易に追加できるのです。
シーン別のベネフィット
たとえば、FAQ対応だけでなく、「特定のキーワードを含む質問が来た場合は社内規程を表示し、入力を控えるよう警告する」といった挙動をカスタムプロンプトで定義できます。
これにより、うっかり機密事項を会話に含めようとした社員に対して自動的に注意喚起が可能です。
さらに、従業員が日常的に触れることで、自然とセキュリティ遵守の意識が高まるという付加効果も得られます。
時間削減だけでなく、リスク管理やナレッジ学習効果という面でも大きな価値があります。
- 問い合わせ時間の削減
上長や法務部に質問する必要がなく、リアルタイムにルール確認が可能。 - 属人化の解消
特定社員だけが知っている運用規程をGPTsが一元管理するため、共有漏れが起きにくい。 - スキルアップ効果
メンバーがAIのガイダンスを受けながら学ぶため、対話形式でポリシーを習熟できる。
想定される懸念点
もちろん、費用やデータ管理などの懸念もあります。
GPTsを利用するには有料プラン(Plus/Team/Pro/Enterpriseのいずれか)が必要になるため、一定のランニングコストは発生します。
ただし、大手SI企業などを通じたオンプレ構築に比べれば、圧倒的に低コストで小回りが利くのも事実です。
また、入力データが外部学習に使われるのではないかという不安は、GPTsの「モデル改善チェック」を手動でOFFにすることである程度は解消できます。
さらに日本国内のAzureリージョンを使ったChatGPT Enterpriseなどと連携することで、リスクをコントロールできます。
どの程度のデータをクラウド環境で扱うかはプロジェクトごとに見極めが必要ですが、GPTsの仕組みなら社内で運用ポリシーを細かく設定しやすいのが強みです。
事例:規制業界でも導入が進む
たとえば製造業大手のパナソニックはAzure OpenAI Serviceを用いて「PX-GPT」と呼ばれる社内GPTを展開し、約9万人の従業員がドキュメント作成や調査業務を効率化しています。
また地方自治体や医療機関でも、個人情報保護の観点からChatGPTを一時禁止していたものの、目的を限定し運用ルールを明確化することで段階的に利用再開している事例が増えています。
次章では、具体的にGPTsを用いた「セキュリティポリシー遵守チェックボット」構築のステップを紹介します。
GPTsで作るセキュリティ遵守チェックボット実装の手順
ここからは、ChatGPTのGPTsを使って実際に社内用の「セキュリティポリシー遵守チェックボット」を構築する際の手順を5ステップに分けて解説します。
大まかな流れは下記のとおりです。
- GPTs編集画面へのアクセス
- システムプロンプトの設計
- 機能設定(画像生成、コード実行、ウェブ検索、キャンバス)の調整
- ナレッジファイルのセットアップ
- アクション機能の有効化
まずは全体像を理解してから、細部の手続きを見ていきましょう。
特にセキュリティポリシー周りのルールをしっかり盛り込むのが最大のポイントです。
1. GPTs編集画面へのアクセス
最初に行うべきは、ChatGPTホーム画面の右上にあるアカウントアイコンから「マイGPT」をクリックし、「新しいGPTを作成する」というボタンを押して編集画面に入るステップです。



なお、GPTsを作成するには有料プラン(ChatGPT Plus/Team/Pro/Enterpriseのいずれか)への加入が必要になります。
無料プランでは使用回数が厳しく制限されているため、実務利用を想定するなら早めに有料化を検討しましょう。
無料プランのまま手軽に試そうとした結果、時間あたりの使用回数制限(3時間80回など)にすぐ達してしまい、社内検証が思うように進まなかったケースもありえます。余裕を持った回数枠を確保できないと、テスト時に意外とストレスとなるので注意が必要です。
2. システムプロンプトの設計
編集画面では真っ先に「システムプロンプト」を設定します。
これはGPTsの振る舞いや言葉遣い、禁止事項などをまとめて指示する枠組みであり、最も重要な部分です。
具体的には以下のようなポイントを盛り込むといいでしょう。
- 「機密情報(顧客氏名、取引先住所など)の入力は一切行わないこと」
- 「入力文がセキュリティポリシー違反となる恐れがある場合は、ユーザーに警告を表示」
- 「利用者が明示的にOKを示さない限り、ログを保存しない・回答に含めない」
企業固有の表現やルールを組み込みやすいのもGPTsの利点です。
実際の文面は社内の情報管理部門と相談しながら、どの範囲を禁止・制限するかを慎重に検討してください。
以下は、ChatGPTのGPTsを活用して「セキュリティポリシー遵守チェックボット」を構築するための、システムプロンプト設計の具体例です。
企業内での安全なAI利用を支援するGPTsのベースとして活用できます。
role: >
あなたはセキュリティポリシー運用に精通した社内サポート担当です。
ユーザーの業務における情報漏えいやポリシー違反を未然に防ぐAIアシスタントとして振る舞ってください。
output_style:
tone: "丁寧でわかりやすい"
structure: "段落形式"
length_preference: "簡潔に"
language_level: "一般社員向け"
behavior_rules:
- "不明瞭な情報には回答せず、確認を促す"
- "セキュリティに関わる質問には慎重な表現を使う"
- "社外秘や個人情報の入力を禁止するよう促す"
knowledge_scope:
include_topics:
- "社内セキュリティポリシー"
- "機密情報の取り扱いルール"
exclude_topics:
- "プログラミングの技術サポート"
response_policy:
priority_order:
- "ユーザーの直接指示(チャット内)"
- "このシステムプロンプト"
- "ナレッジファイルの内容"
fallback_strategy: >
回答不能な場合は、無理に推測せず「その点については情報が不十分です」と伝えてください。
clarification_policy: >
ユーザーの質問が曖昧な場合は、「〜という意味でしょうか?」と必ず意図を確認してください。
default_output_format: >
必要に応じて以下の形式で出力してください:
・確認ポイント:◯◯
・該当ポリシー:△△
・推奨アクション:□□

3. 機能設定(画像生成、コード実行、ウェブ検索、キャンバス)の調整
GPTsでは、「画像生成」「コードインタープリター」「ウェブ検索」「キャンバス」などの機能をチェックボックスでON/OFFできます。
デフォルトでONになっている機能もありますが、セキュリティリスクや利用方針に合わせて必要なものだけを有効にしましょう。
- 画像生成
プロモーション用資料の作成やアイデアスケッチに便利ですが、社内機密の画像を誤ってアップロードする危険がある場合は慎重に。 - コードインタープリター
データ解析やスクリプト実行を行う際に有用ですが、権限管理と誰が何の目的で使うかを明確化する必要があります。 - ウェブ検索
外部サイトから追加の情報を取得できますが、企業内の機密情報と混在しないようログ管理に注意。 - キャンバス
視覚的なブレインストーミングに使えますが、公開範囲の設定やリソース管理を確認しましょう。
4. ナレッジファイルのセットアップ
次に行うのが、「知識 → ファイルをアップロードする」メニューからセキュリティポリシー文書や、社内規程をまとめたPDF・Word・CSVなどのファイルをアップロードする手順です。
最大512MBまでのファイルアップロードが可能で、GPTsのデータ分析機能をONにしておけば、アップロードした文書内容を応答に活かせます。


企業の就業規則やコンプライアンスガイドライン、また顧客情報保護の細則などをひとつにまとめておくと、社員が疑問を感じた時に直接GPTsに聞くだけで正しいルールを提示してもらえるようになります。
ただし、アップロードしたファイルはGPTsの画面上で直接編集できないので、改訂があればいったん削除して再アップする必要がある点に注意しましょう。
5. アクション機能の有効化
最後に、GPTsの編集画面にある「アクション → 新しいアクションを設定する」を確認します。
ここでは外部API連携の設定や、入力テキスト内に特定キーワードが含まれていた場合の処理をプログラム的に追加可能です。


たとえば「client_secret」「個人番号」などの単語を検知したら、即座に警告を出して会話を中断するアクションを組み込むと、より強固なセキュリティ対策を実現できるでしょう。
これら5つのステップを通じて、GPTs上に「セキュリティポリシー遵守チェックボット」を構築できます。
使い始めた後も運用状況に合わせて随時設定を見直し、更新していくことが大切です。
次章では、より具体的なセキュリティ対策のポイントを紹介します。
セキュリティ対策でリスクを最小化
ChatGPTのGPTsを業務に導入する際、AIの利便性だけに依存するのは極めて危険です。
特に情報を扱う企業では、既存のセキュリティ施策と組み合わせながら、生成AI特有のリスクに備えるための追加対策が不可欠です。
この章では、GPTs利用時に想定される主なリスクを洗い出し、それぞれに対する具体的な対応策を「リスク → 対策 → 効果」の順に整理します。
具体的には、機密情報の外部流出、誤情報の配信、不正アクセスによる情報漏洩などが代表的リスクとして挙げられます。
これらに対して、GPTsの持つ「モデル改善チェックの無効化」や「アクション機能による制御」などの機能を活用することで、リスクを抑えつつ安全に活用できる運用が実現します。
次項からは、それぞれのリスクに対する対策と実践ポイントを詳しく見ていきましょう。
想定されるリスクとその対策
GPTsを利用する際に直面する代表的なリスクには、外部へのデータ漏えいやAI出力の信頼性の低さ、アカウントの乗っ取りによる内部データの不正取得があります。
これらのリスクに対しては、GPTsが提供する機能を適切に設定し、かつ既存の社内ルールと連動させることで、実務レベルでの運用に十分耐えるセキュリティを構築できます。
リスクカテゴリ | 原因の例 | 推奨設定・対策 |
---|---|---|
外部リーク | 誤って機密情報を入力 | モデル改善チェックOFF、アクションで禁止ワード検知 |
誤情報 | 精度不足、社内文書不備 | ナレッジファイルの定期更新、担当者レビュー導入 |
不正アクセス | 認証情報の漏洩 | シングルサインオン連携、権限ごとのGPTs利用範囲設定 |
とくに重要なのが、「GPTsは万能ではなく、AI出力には人間によるレビューが必須である」という前提を組織全体で共有することです。
その上で、アクション機能で“禁止語句”を入力された場合に警告を出す仕組みなどを組み込み、初期段階から安全設計を徹底しましょう。
法的・社内規程に沿った設計の重要性
GPTsの利用にあたっては、個人情報保護法(APPI)や社内セキュリティポリシーとの整合性を保つことが最優先課題です。
たとえば、APPIでは「個人データの第三者提供時に本人同意が必要」とされていますが、ChatGPTを含む外部サービスへ個人情報を送信する行為がこれに該当する可能性があります。
このようなリスクを回避するには、GPTsのシステムプロンプトにおいて、機密性の高い情報を入力しないように促す記述を明示するとともに、「これは個人情報ではありませんか?」と確認する対話設計が有効です。
加えて、企業ごとの規程やルールをGPTs内に組み込み、ナレッジファイルとしてアップロードしておけば、従業員がいつでも確認できる状態を保つことができます。
- 利用者に対して警告や確認を促す対話設計
→ プロンプトで「この内容は外部共有してもよいですか?」などの事前チェック - ルールの内在化
→ 社内ポリシーをナレッジファイルにまとめ、GPTsにアップロード - 判断困難なケースへの対応策提示
→ GPTsが自動判断せず、管理者への確認を促すフロー設計
法律・社内規程に適合したAI設計こそが、GPTs活用を持続可能にする鍵です。
安全運用のためのチェックリスト活用
GPTsを「安心して業務に組み込める存在」とするためには、導入後の運用フェーズにおいてもセキュリティ状況のモニタリングが不可欠です。
以下のようなチェックリストを作成し、運用担当者が定期的にレビューすることで、リスクの兆候を早期に発見できます。
- モデル改善チェックがOFFになっているか
ChatGPT編集画面の「追加設定」にて状態確認 - 禁止ワード検知が正常に機能しているか
テストキーワードでアラートが出るかを定期確認 - ナレッジファイルの内容が最新版か
規程更新時に再アップロードが実施されているか - アカウントと権限管理が適切に行われているか
退職者のアカウント削除、利用ログの監視は万全か


これらを運用ドキュメントとして明文化し、Slack・Notion・社内ポータル等で継続的に共有・更新すれば、属人化を防ぎつつ組織全体での安全運用が実現します。
多層的な対策と見える化された運用が、GPTsのセキュアな活用を支える基盤となるのです。
運用と改善で持続的に高い効果を引き出す
セキュリティポリシー遵守チェックボットの実装が完了したら、いよいよ運用フェーズに入ります。
導入した直後は利用者も慣れていないため、「どんな質問をしていいのか分からない」「指示がうまく通じない」といった声が上がることがあります。
そこで、初期段階では簡単な問い合わせ例や想定Q&A集を数十件ほど用意しておくとスムーズです。
運用開始後のマイルストーン
最初の30日~90日間は試験運用の位置づけで、利用実績や想定外の質問パターンを確認しながら細部を調整しましょう。
- 30日目
ユーザーの使い方をモニタリングし、主要なエラーや誤警告を洗い出す。初期学習コストを下げるため、社内勉強会を開催すると効果的。 - 60日目
重要な社内文書を追加アップロードするなど、ナレッジファイルを強化。利用者のフィードバックから改善要求をリスト化し、システムプロンプトの微調整を行う。 - 90日目
利用データを分析しKPIを確認。例として「自己解決率」「時間削減コスト」「ヒヤリハット報告数」などを定量評価し、追加対策や社内周知を検討。
KPIの追跡とPDCAサイクル
運用効果を高めるためには、定期的なPDCA(Plan→Do→Check→Act)が欠かせません。
具体的には、次のようなフレームを想定してみましょう。
- Plan
「ナレッジファイルを月1回アップデートする」「誤警告率を10%以下に抑える」など目標を立てる。 - Do
GPTsの利用促進施策として、週1回のメルマガやTips共有を行う。利用者の困り事を吸い上げる窓口を設ける。 - Check
KPIの達成度や問い合わせ件数の推移をGoogle SheetsやSlackチャンネルで可視化し、定例会でレビュー。 - Act
問題が見つかれば、アクション機能のルールを追加する、システムプロンプトを改定するなどの改善策を講じる。
成熟度別の改善アイデア
「ライト層 → スタンダード層 → アドバンス層」という括りで改善策を設定すると分かりやすいでしょう。
- ライト層
部署内のよくある質問をまとめる。誤入力しやすいキーワードの検知ルールを最低限設定。 - スタンダード層
部署横断でナレッジファイルを統一し、人事や総務部門の手続きをボット化。リスク対策としてモデル改善チェックOFF徹底。 - アドバンス層
DLPツールなどと連携し、ChatGPTへ送信されるデータをリアルタイムでモニタリング。定期的な運用レビュー会議を実施し、短いスパンでPDCAを回す。
失敗パターンと回避策
ある企業では、運用担当者が定期チェックを怠ったため、社内規程が改定されていたのにGPTsのナレッジファイルが古いままという事態が発生しました。
結果として誤ったルールを回答し続け、気づかないうちにコンプライアンスリスクを高めていたのです。
このような失敗を防ぐには、担当者ロールを明確化し、月に1回はファイル更新を担当者がリマインドするフローを作りましょう。
まとめ
GPTsを活用した社内向け「セキュリティポリシー遵守チェックボット」は、業務効率化とコンプライアンス確保を同時に実現する強力な手段です。
導入にあたっては、ChatGPTホーム画面のマイGPT機能を使って独自に設定をカスタマイズし、モデル改善チェックのOFFやアクション機能での禁止ワード検知などを組み合わせれば、外部漏えいリスクや誤情報配信を最小限に抑えることができます。
ただし、運用開始後のナレッジ更新や定期的なKPIレビューを怠ると、せっかくのボットが誤回答や陳腐化の温床となる可能性もある点には注意が必要です。
実装した後の継続改善こそが、安心してGPTsを使い続けられる鍵と言えます。
企業はこれからも「DX推進」と「情報保護」の両面を両立していくことが迫られます。
GPTsならではの柔軟性を活かし、ぜひ自社に最適なセキュリティ・チェック体制を整えてみてください。
最終的に得られるのは、ミスを恐れずにイノベーションを推進できる安全な社内環境です。
ぜひ、こうした社内AI活用を推進する際には、FreedomBuildなどの専門サービスを活用し、適切なサポートを受けながら進めてみてはいかがでしょうか。