ChatGPT・GPTs

ChatGPTのGPTsで営業メールを自動化!構築ガイド

当記事の要点

  • GPTsを活用すれば営業メールの個別最適化が自動化できる
  • 日本語の丁寧表現や商習慣にも対応可能なGPTsが営業に適している
  • 法令対応や個人情報管理を踏まえた安全設計が成功の鍵となる
  • 改善フィードバックを取り入れることでGPTsの精度が継続的に向上する

こんにちは、FreedomBuildの駒田です。

「営業メールの作成に、毎回時間がかかってしまう……」
「一斉送信では反応が悪い。でも、1件ずつパーソナライズする余裕なんてない……」

そんな悩みを抱える営業担当者は多いのではないでしょうか。

特に日本の法人営業では、相手ごとに丁寧な文面が求められるため、テンプレートのコピペだけでは通用しない場面も増えています。

そこで注目されているのが、ChatGPTの「GPTs」機能を活用した営業メールの自動化です。

従来のAIとは異なり、GPTsなら「自社専用ボット」をノーコードで構築できるため、特別な技術がなくても現場に即した自動化が可能になります。

メール作成にかかる時間の削減、返信率の向上、コンプライアンス対応までを一貫して実現できるこの仕組みは、少人数体制の営業チームやDXを急ぐ企業にとって大きな味方となるでしょう。

この記事では、そんなGPTsによる営業メールパーソナライズボットの活用法と構築ステップを、やさしく丁寧に解説していきます。

自分だけのGPTsを、プロと一緒に。

音声版も用意しています

GoogleのNotebookLMで作成したAI音声です。

日本の営業現場が直面する人手不足とDXの波

日本の営業現場は今、深刻な人手不足とDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速という二重の課題に直面しています。

営業人材の確保が難しくなる一方で、限られた人員で成果を最大化するための効率化ツールが強く求められています。

こうした背景の中、GPTなどの生成AIは、業務負担の軽減と営業活動の質的向上の両立を可能にする存在として注目されています。

労働人口減少が営業効率化を迫る背景

日本の営業組織は、急速に進む少子高齢化と人手不足のダブルパンチに直面しています。

営業職の人口は過去15年間で約60万人も減少し、現在では約810万人と労働人口の12%を占めるにすぎません。

このような環境下で、企業は限られた人員でより多くの成果を求められるようになり、営業活動の「効率化」や「仕組み化」への投資が不可欠となっています。

中でもインサイドセールスを導入する企業が増えており、2021年時点での導入率は36.4%と、2010年代の約11.6%から大きく伸びました。

さらに、営業職の有効求人倍率は2.14倍と、全職種平均の1.19倍を大きく上回っており、営業人材の確保そのものが難しくなっている現実もあります。

こうした背景から、企業はAIや自動化ツールを用いて、限られたリソースで最大の成果を上げる手段を模索しています。

なぜメール営業が再注目されているのか

かつては「訪問してなんぼ」と言われていた日本の営業現場も、コロナ禍をきっかけに非対面型の営業スタイルへと大きく変化しました。

現在では、買い手の約4割が「リモート提案でもマイナス印象を持たない」と回答しており、メールやオンライン会議による商談も当たり前になりつつあります。

特に注目されているのが、パーソナライズドなメール営業です。

一斉配信のテンプレートではなく、相手の業種・役職・課題感に応じた内容に調整されたメールは、開封率・返信率ともに大きく向上する傾向があります。

  • Experian調査によると、パーソナライズされた件名のメールは開封率が26%高まる
    メールの第一印象を左右する件名の工夫だけでも、結果に大きな差が出ます。
  • 一通ごとの文面をカスタマイズすることは、実は日本の商習慣にも合致
    日本では「一斉メール」よりも、丁寧に書かれた「自分向けの提案」が好まれる傾向があります。
  • 営業活動の中でも、メール作成は多くの時間を占めている
    とくに複数の意思決定者が関与する日本型の営業プロセスでは、フォローメール作成なども含めて煩雑になりがちです。

このような背景から、営業現場では「効率と丁寧さ」を両立できる自動化手段として、GPTsを使ったメール生成に期待が高まっています。

GPTsが注目されるまでの技術進化と変遷

営業メールにAIを活用するアイディア自体は、以前から存在していました。

CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)でも、定型メールの送信機能やリマインドメールの自動化などは既に導入されています。

しかし、従来のツールは「定型・マニュアル化された内容」を前提としており、本当の意味での“パーソナライズ”には対応しきれませんでした。

そこに登場したのが、自然言語処理技術の進化を背景にしたChatGPTのような生成AIです。

技術進化段階概要
定型文自動挿入(2000年代〜)CRMやSFAで、事前に登録したテンプレートを使ってメール文面を挿入。変数(名前、企業名)置換程度の対応。
ルールベースの文生成(2010年代〜)MA(マーケティングオートメーション)で、条件分岐に応じたメール文面を設定可能に。とはいえ柔軟性には欠けた。
生成AI(2020年代〜)GPTなどが登場し、「文脈理解+自由生成」が可能に。営業メールも一件ごとに自然な文体で自動作成できるように。

とくに2023年以降、ChatGPTの「GPTs」機能が登場したことで、非エンジニアでも業務に即したAIボットを構築できる環境が整いました

メール文面の生成だけでなく、「社内ナレッジを取り込んで文面を最適化する」「画像生成やCSV解析まで対応する」といった機能も含め、これまでにない営業支援の形が実現しつつあります。

メール営業の課題と限界を可視化する

営業現場では、メールを活用した非対面のアプローチが主流になりつつある一方で、成果を伸ばし続けるには限界がある手法も数多く存在します。

特に、テンプレート頼りのメール配信や、CRM導入の遅れ、法令遵守の煩雑さなどが足かせとなり、営業担当者の生産性を大きく制約しています。

ここでは、現在の営業メール運用における主要な問題点を整理し、なぜGPTsのような生成AIの導入が必要とされているのかを明らかにします。

テンプレート営業が招く成果の頭打ち

多くの営業現場では、「テンプレートメール」の大量送信によって効率化を図ろうとする傾向があります。

確かに一斉配信は手間を減らせますが、以下のような課題が浮かび上がっています。

  • 差別化ができず、開封されにくい
    顧客は「また同じような営業か」と判断し、開封すらされないケースが増加。
  • 内容が画一的で共感を得られない
    相手の業界や課題に即していない文面では、返信につながりにくい。
  • 件数をこなす一方で、質が落ちる
    営業担当者が数を追うあまり、内容精査の余地が失われる。

こうした状況が続くと、結果として「営業メールの限界」を感じる担当者が増え、ツールへの不信感にもつながります。

CRMやSFAの導入率が低迷する理由

営業支援ツールとして知られるCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)は、営業活動の見える化や業務効率化に寄与する重要な存在です。

しかし、日本企業ではまだ全体の36.2%しか導入されておらず、特に中小企業での活用は進んでいません。

  1. 初期コストや運用負荷が懸念される
    「使いこなせなければ無駄になる」という心理が導入を妨げています。
  2. 入力作業が営業の負担になりやすい
    営業現場では「顧客と向き合う時間を減らしたくない」という声も多いです。
  3. システムと実務が噛み合わない
    ツール導入が「管理者視点」に偏ると、現場では使われなくなってしまいます。

このような理由から、ツールを導入しても「活用されない」事例が相次ぎ、結果的に営業データの整備や活用が進まないという悪循環に陥っているのです。

法令対応や敬語表現が求められる日本独自の事情

さらに、日本市場ならではの法的・文化的要件が、営業メールの設計と運用に追加の複雑さをもたらしています。

  • 特定電子メール法の規制が厳格
    オプトイン(事前同意)取得、送信者情報の明記、配信停止案内の記載などが必須。
  • 個人情報保護法に基づくデータ管理が必要
    メール作成に使用する顧客データの取り扱いには慎重さが求められる。
  • 敬語や丁寧な表現が常識とされる
    不適切な言い回しや失礼な文面は、すぐに信用失墜につながる。

特に法人営業においては、複数の関係者がメールを閲覧するケースが多く、誰に読まれても失礼のない文体と内容が必要不可欠です。

こうした要素を毎回手作業で整えるのは現実的ではなく、品質と効率の両立がますます難しくなっているのが現状です。

GPTsで解決する!営業メール自動化の新しい選択肢

メール営業の「質」と「量」を両立させるには、もはや人力だけでは限界があります。

そこで登場するのが、ChatGPTのGPTs機能を活用したパーソナライズ自動化です。

GPTsなら、営業現場の業務フローやナレッジに合わせたカスタムボットをノーコードで構築でき、社内データを活かした文面生成や業界に応じた対応も自在に設定可能です。

従来のテンプレート運用では難しかった「一件ごとの文面最適化」や「言い回しの柔軟性」を保ちながら、作業負担を大幅に軽減できます。

ここでは、GPTsによる解決の具体像を3つの視点から紹介します。

GPTsなら1通ごとのカスタマイズが苦にならない

GPTsを活用すると、1通1通のメールを個別最適化する作業が、自動処理で完結します。

営業担当者が設定したルールやナレッジファイルをもとに、顧客ごとの情報を加味したパーソナライズ文面をリアルタイムで生成できるため、次のような恩恵があります。

  • 同じ商品でも相手に応じて語り口を変えられる
    役職・業種・関心に応じて表現を柔軟にコントロール。
  • テンプレート修正の手間が激減する
    一つのプロンプトで複数パターンを即座に生成可能。
  • 大量のフォローメール作成も一括対応可能
    営業フェーズごとに自動で文面を変えることができる。

このように、「1人ずつ丁寧に書く理想」と「大量対応の現実」を両立させる手段として、GPTsの価値は非常に高いといえます。

日本語特有の表現に強いGPTsの実力

日本の営業メールでは、単に内容を伝えるだけでなく、敬語の使い方や言い回しの“空気感”も成果に直結します。

ChatGPTは、もともと自然言語処理能力が高いため、日本語独特の丁寧表現や敬語の使い分けにも十分対応可能です。

特にGPTsでは、システムプロンプトでトーンや文体を細かく設定できるため、以下のような文化的要請にもフィットさせられます。

  1. 役職や上下関係に応じた敬語の使い分け
    例:「お時間を頂戴できますでしょうか」vs「ご確認いただけますと幸いです」
  2. 長文にならない日本的な文体の最適化
    短く端的で、要点を絞ったビジネス文に自動調整可能。
  3. 「失礼のない距離感」を意識した文面生成
    オープニング・クロージングの言い回しまで丁寧に調整。

こうした点が評価され、日本法人向けのGPT導入事例も増えてきており、営業支援ツールとしての信頼性が高まりつつあります

誤送信・誤情報リスクを下げる「グラウンディング」とは

AIが生成する文章には、事実と異なる内容(いわゆる“ハルシネーション”)が含まれるリスクがあります。

このリスクを軽減するために、GPTsでは「グラウンディング」――つまり社内ナレッジや実データに基づいた生成を行うことが可能です。

グラウンディング活用例効果
顧客の属性や過去の商談履歴をナレッジファイルに取り込み相手に応じた提案メールを自動生成
商品の最新仕様書やFAQをアップロード誤った情報を含まない案内文が作成される
用語集・業界辞書を事前設定表記揺れや専門用語の誤用を防止できる

加えて、GPTsの編集画面ではファイルアップロード後に「コードインタープリターとデータ分析」機能をONにすることで、構造化データにも対応

CSVファイルや商品マスタを読み込み、条件に合った営業メッセージを生成する、といった使い方も可能になります。

このように、事実と整合した“信頼できる営業メール”をスピーディに届けられるのが、GPTs導入の最大の強みといえるでしょう。

GPTsで営業メールボットを作る5つのステップ

GPTsを使って営業メール自動化ボットを構築するプロセスは、大がかりな開発やエンジニアリングなしでも実現可能です。

ChatGPT内の専用機能「GPTs」を活用すれば、ノーコードで自社に最適化された営業支援ボットを構築できます。

ここでは、GPTsの基本構成要素に沿ってボットを完成させるための5ステップを順に解説します。

1. GPTs編集画面にアクセスする

まずはボット作成のスタート地点となる編集画面へのアクセスです。

ChatGPTのホーム画面右上のアカウントアイコンから、「マイGPT ▸ GPTを作成する」と進むことで、GPTsの編集画面に入ることができます。

GPTs作成画面へのアクセス_1
GPTs作成画面へのアクセス_2
GPTs作成画面へのアクセス_3

有料プラン(Plus/Team/Pro)であれば誰でも利用可能で、作成したボットは一覧として「マイGPT」に時系列で表示されます。

一度アクセスした編集画面はブックマークしておくと作業効率が上がります

なお、無料ユーザーはGPTsの作成はできず、利用のみ可能となっています(使用回数にも制限あり)。

2. システムプロンプトを設計する

GPTsの“頭脳”にあたるのがこのシステムプロンプトです。

ここに入力する内容が、生成されるメールのトーン・表現・対象顧客の粒度に直結します。

営業メールボットの場合、以下のような要素を含めると効果的です。

  • 文体(丁寧語/ですます調)や文字数制限
    日本語特有の敬語表現や、短めのメールフォーマットにも配慮。
  • 対応シナリオの明示
    例:「初回提案」「フォローアップ」「失注後の再アプローチ」など。
  • 禁止表現・推奨語彙の指定
    例:「今だけ」や「絶対」はNG/「ご提案」「お役立ち」などはOK。

この段階で実務フローと出力形式をすり合わせておくことで、現場で“使える”ボットに仕上がります

さらに、対応文例のトーンやNGワード、読者の前提知識レベルなども織り込むことで、実運用に耐えうる汎用性と精度を兼ね備えたボットが完成します。

営業メールGPTsのシステムプロンプト例として以下を参考にしてください。

role: >
  あなたは営業支援に特化したメールライティングAIです。
  ユーザーが指定した営業シナリオに応じて、適切な敬語と構成で営業メールを作成してください。

output_style:
  tone: "フォーマル"
  structure: "段落形式"
  length_preference: "300文字以内"
  language_level: "ビジネス初級者向け"

behavior_rules:
  - 「今だけ」「絶対」「お得」など過度な広告表現は禁止
  - 事実確認が取れない情報は曖昧に書かず、含めない
  - 社名や氏名を挿入する部分は {{顧客名}} のように変数で出力すること

knowledge_scope:
  include_topics:
    - 営業メールの構成と敬語表現
    - 業種別の提案フレーズ
  exclude_topics:
    - 商品開発
    - 法務・契約相談

response_policy:
  priority_order:
    - "ユーザーの直接指示(チャット内)"
    - "このシステムプロンプト"
    - "ナレッジファイルの内容"
  fallback_strategy: >
    指示や情報が不十分な場合は「具体的な営業シナリオを教えてください」と促してください。

clarification_policy: >
  業種・役職・営業段階(初回提案、フォロー、失注後など)について明確でない場合は確認してください。

default_output_format: >
  件名案(20文字以内)+本文(300文字以内)を以下のように出力してください:

  件名:{{件名案}}

  本文:
  {{本文内容(挨拶、提案、結び)を段落構成で記述}}
GPTsに与える指示を設定

3. 機能(画像生成・コード・ウェブ検索など)を設定する

GPTsでは、ボットに搭載する補助機能のON/OFF設定が可能です。

営業メールボットにおいては、以下のような構成が実用的です。

  • ウェブ検索:ON(初期設定でON)
    顧客名から最新ニュースを取得する用途に活用可能。
  • キャンバス:ON(初期設定でON)
    出力結果をビジュアル的に可視化したい場合に便利。
  • 4o画像生成:ON(初期設定でON)
    提案資料や製品イメージを自動生成する用途も検討可能。
  • コードインタープリターとデータ分析:OFF → ONに変更推奨
    CSVや顧客リストなど、データ処理が絡む場合に必須です。

GPTsは「できること」を絞るほど安定性が高くなるため、必要機能だけを有効化するのがコツです

4. ナレッジファイルをアップロードする

このステップでは、ボットに実務知識を学ばせるために、ナレッジファイル(PDFやCSV、マニュアルなど)を追加します。

アップロード手順は、編集画面の「知識 ▸ ファイルをアップロードする」から実行できます。

サポートされる形式は豊富で、.txt、.pdf、.csv、.docx、.xlsx、.json などに対応。

アップ後は忘れずに「機能 ▸ コードインタープリターとデータ分析をON」にしてください。

ファイルのアップロード_1
ファイルのアップロード_2

これによりGPTsがファイル内容を読み取れるようになります。

アップロードには制限があるため注意も必要です。

項目制限値
単一ファイルサイズ最大512MB
CSVファイル最大50MB(構造不備はNG)
GPTs単位の合計数最大20ファイル/10GBまで

更新は「削除→再アップロード」が必要で、編集はできない点にも留意しましょう。

5. アクション機能を有効にする

最後の仕上げが、API連携や外部トリガーと接続するアクション設定です。

GPTsでは、編集画面の「アクション ▸ 新しいアクションを設定する」から、外部APIとの通信ロジックを追加できます。

たとえば、以下のような応用が考えられます。

  • CRMから引っ張ってきた顧客情報を元にメール文を自動生成
  • Googleスプレッドシートに保存されているリードリストを読み込んで1件ずつ処理
  • SlackやLINEなどに生成メールを自動通知

アクション設定はオプションですが、「GPTsを社内システムに組み込む」ための入口として非常に重要です。

実務での自動化効果を最大化したい場合は、ここまでの構成で一連の仕組みを整えておきましょう。

GPTsのアクション設定_1
GPTsのアクション設定_2

API連携は難易度が高くなるため、最初はおすすめできません。まずはシステムプロンプトとナレッジファイルを工夫してGPTsを作ってみましょう。

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法令対応とデータガバナンスを見落とさない

どれほど高機能な営業メールボットを構築できたとしても、日本の法令やデータ取り扱いの基準を逸脱すれば、信頼は一瞬で失われます

特に営業活動に関連するメール配信や個人情報管理には、細心の注意が必要です。

GPTsを用いたメール生成では、「便利さ」の裏側にあるリスクとルールの正しい理解と対処が不可欠となります。

ここでは、法令・ガバナンスの3大観点を軸に、具体的なポイントを整理していきましょう。

特定電子メール法とその例外を理解する

営業メールに関する法的制約の中核をなすのが、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、いわゆる特定電子メール法です。

この法律では、受信者の意思に反した迷惑メールの送信を防ぐため、営業メールの送信者に以下の義務が課せられています。

  • 事前にオプトイン(配信許可)を得ること
    原則として広告・営業目的のメール送信には明示的な同意が必要。
  • 送信者情報・配信停止方法の明記
    氏名・連絡先・配信解除手段を必ず文面に記載。
  • 送信履歴や配信リストの管理
    適切な管理体制を維持し、苦情や監査に備える。

ただし、法人営業におけるBtoBメールで、公開された企業アドレスに対する送信などは例外とされる場合があります。

とはいえ、GPTsで生成するメールにも明確な「配信者名」「解除リンク文面」などを組み込む仕組みが必要不可欠です。

個人情報保護法に準拠した運用設計

メールボットの設計段階で避けて通れないのが、個人情報の取り扱いに関する配慮です。

日本の個人情報保護法では、氏名・メールアドレス・所属企業などが「個人情報」として定義され、それを第三者(GPTなど)に渡す際には明確な利用目的と最小限の範囲設定が求められます。

  1. 取得時に利用目的を明示しておくこと
    例:「営業メールのカスタマイズ生成に利用」と明記する。
  2. ナレッジファイルに不要な個人情報を含めない
    必要最小限の属性情報(業種・役職など)に絞る工夫が重要です。
  3. GPTsの「モデル改善」チェックをOFFにする
    編集画面最下部にある「会話データを使用してモデルを改善する」は初期ONなので、必要に応じてOFFに変更。
会話データの学習を拒否する_1
会話データの学習を拒否する_2

こうした対処により、GPTsを活用しながらも社内ポリシーと法令を両立した設計が可能になります。

データ国外転送のリスクとGPTsでの回避策

もう一つ重要な観点が、クラウドサービスを通じた「データの国外移転」問題です。

GPTsの処理は基本的に米国サーバー上で行われるため、個人情報や機密情報を含む場合は「十分な保護措置がない国への提供」に該当するリスクがあります。

このような状況を踏まえ、企業としては以下のような対応を検討すべきです。

  • GPTsへの入力データは原則「匿名化」または「属性データのみに限定」
    顧客の氏名や連絡先は不要な限り避けるのが安全です。
  • 社内規定に準じた同意取得プロセスの整備
    同意書や規約でAI活用の可能性について明示しておくと安心です。
  • 高度な情報を扱う場合は「オンプレミスAI」や「社内クローズ環境での利用」を検討
    現時点でGPTs自体はオンプレ提供非対応ですが、使用目的を明確に絞ることでカバー可能です。

こうした配慮を設計段階から組み込むことで、「安心して運用できるGPTsボット」を実現することができます。

法的リスクを正しく理解したうえで、現場で使えるガイドラインを整備しておくことが今後ますます重要になるでしょう。

運用後の改善・フィードバック循環を設計する

営業メールボットは「作って終わり」ではなく、運用後の改善と最適化を前提とした設計こそが成果を分ける鍵です。

GPTsは静的なツールではなく、ナレッジやプロンプト、アクションを柔軟に更新できる構造を持っているため、継続的なチューニングが可能です。

ここでは、成果指標の把握から改善サイクルの回し方、ベータ版からスケール導入への考え方までを整理します。

開封率・返信率のデータ計測と分析方法

営業メールの効果を測るうえで最も重要なのが、「開封されたか」「返信されたか」という2つのKPIです。

GPTs自体にはログ解析やトラッキング機能はありませんが、次のような工夫で外部の可視化環境と連携させることができます。

  • メール配信システム(SendGridやMailchimp)と併用する
    GPTsで文面を生成し、それを外部ツールで送信・開封追跡する仕組み。
  • Googleスプレッドシート等で配信履歴を管理する
    顧客ごとの送信日時、返信有無、フェーズ別コメントなどを記録。
  • 件名や送信タイミングのA/Bテストを実施する
    文面の微調整による効果差を可視化するのに有効。
指標名意味推奨分析例
開封率件名の魅力や信頼感の指標曜日や部署別に変化を比較
返信率提案内容や文面構成の有効性「導入済」「検討中」で分類分析
商談化率CTA(行動促進)文の強さリンククリック率や日程調整数から逆算

データに基づいて運用を見直すことで、属人的な試行錯誤から抜け出せます。

フィードバックをGPTsに反映させる工夫

生成AIは一度設計すれば万能というわけではなく、現場で得た知見を都度取り込むことが品質向上の鍵になります。

GPTsでは以下のような手段で「改善の反映」が行えます。

  1. システムプロンプトの書き換え
    現場の声(NGワード/誤解を招いた表現)を元に、文体や出力ルールを更新。
  2. ナレッジファイルの差し替え
    製品仕様やFAQの更新に応じて、古いPDFやCSVを削除→再アップロード。
  3. アクション機能のチューニング
    API連携や出力処理ロジックを改善し、フィードバックループを強化。

ポイント

  • 月次で「出力結果のレビュー会」を設ける
    営業チーム内でGPTsの文面を確認し、改善案を収集。
  • フィードバック用フォームをGPTsに組み込む
    エンドユーザーや同僚からの声を集約する仕組みを内製。

こうした運用を定例化することで、GPTsは“静的なAI”ではなく“進化する営業パートナー”となります。

ベータ運用から本格導入へのスケーリング戦略

初期構築が完了したら、次は限定チームでのテスト運用(PoC)から、本格導入への展開に備える段階に移ります。

ChatGPTのGPTsは1アカウントで100体以上のボット作成が可能なため、スモールスタート〜拡大運用が非常にしやすい構成です。

  • 導入初期は1部門/特定製品に限定してPoC実施
    例:SaaS部門のフォローアップメール用途など
  • 反応が良ければ、社内で再利用テンプレート化
    似た業務にも展開できる汎用プロンプトを確立。
  • 複数チーム展開時は「ワークスペース管理権限」に注意
    チームプランでは編集権限の管理・移譲ルールを明確に。

また、GPTsストアでの外部共有や、社内ポータルへのリンク設置も検討すれば、GPTsを“ナレッジ共有インフラ”として育てることも可能です。

成果を分析し、課題に合わせて微調整を繰り返す。

このサイクルを回せる組織こそ、GPTsを「単なる自動化ツール」ではなく、継続的な営業成長の起点として活用できるのです。

まとめ

人手不足とDXの波を受ける日本の営業現場において、メール営業の自動化は喫緊の課題です。

従来のテンプレート営業では限界が見えつつあり、パーソナライズの精度と効率の両立が求められています。

その中で注目されるのが、ChatGPTのGPTs機能を活用した営業メールボットの構築です。

ノーコードで作成でき、社内ナレッジを反映させた高品質な文面を大量生成できる点が、従来ツールとの差別化ポイントになります。

法令対応やデータガバナンスを意識した設計、そして継続的なフィードバックループの構築により、安全かつ実用的な運用が可能です。

今後、GPTsを業務に取り入れることで、営業活動の質と量の革新を同時に実現する手段として、大きな競争優位を築けるはずです。

自分だけのGPTsを、プロと一緒に。

参考元

駒田 隆成
駒田 隆成

ChatGPT 活用支援 / 構文設計者

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