当記事の要点
- ChatGPTのGPTsを活用し、営業職向けオンボーディングクイズを自動生成する方法を紹介
- 教材作成と習熟度チェックをGPTsで効率化し、トレーナーの工数を大幅に削減できる
- 定着率や初受注までの期間など、導入効果を数値で可視化し改善PDCAを回せる設計
- セキュリティ面でもGPTsはログ非保存設計で、社内規程との整合が取りやすい
こんにちは、FreedomBuildの駒田です。
新人が入社してまず直面するのは、「知らないことだらけ」の環境です。
どんな製品を扱うのか、どんなルールがあるのか、どう動けばいいのか——。
その不安を減らすために、企業が力を入れているのがオンボーディング(新入社員受け入れ支援)です。
けれど現場では、研修資料を準備する人事担当者や、OJTを担う先輩たちが「時間がない」「ノウハウが属人化している」という課題に悩まされています。
特に営業職では、知識の定着度を測る確認テストをつくるだけでも大きな負担となり、準備に手が回らないケースも少なくありません。
そこで注目したいのが、ChatGPTの「GPTs」機能を使って、クイズ生成ボットを構築する方法です。
GPTsを使えば、社内マニュアルやFAQなどの資料からAIが自動でクイズを生成してくれるため、研修準備の手間を大幅に削減できます。
それだけでなく、新人がチャット形式で気軽に学習・復習できるインターフェースを用意することで、習熟度のばらつきもカバーできるようになります。
この連載では、ChatGPTのGPTsを使って「従業員オンボーディングの課題」をどう効率的に解決するか、その具体的な方法を分かりやすく解説していきます。
いまオンボーディングに必要な理由
コロナ禍を経て、企業の人材戦略は「採用」から「定着」へと大きくシフトしました。
特に中堅〜大企業では、若手・中途社員の早期離職が業績に与える影響が無視できない規模となっており、オンボーディング(入社後の定着支援)はもはや必須の人事施策とされています。
近年では、クラウド型人事管理システムやエンゲージメントツールの普及により、オンボーディングのデジタル支援環境も整ってきました。
しかしその一方で、以下のような課題も根強く残っています。
- 形式的な研修に終始しがち
書類提出や制度説明だけで終わり、肝心の業務理解や現場適応が不十分。 - 教育の属人化が深刻化
OJTの質が先輩社員の経験値や余裕に依存してしまう。 - 部門間で対応レベルにばらつき
営業部門では必要な知識の幅が広く、教育工数もかさむ。
こうした背景を踏まえると、「いまこそオンボーディング強化の仕組み」が必要だと言えるでしょう。
離職率が示す「新人定着」の深刻さ
日本企業の新入社員における3年以内の離職率は約30%に達しており、特に大卒者では32.8%というデータもあります。
離職理由として多く挙げられるのは、次のようなものです。
- 職場環境や待遇への不満
- 入社前後のギャップ
- 業務理解不足によるストレス
つまり、「実際に働いてみたら思っていたのと違った」「何をすれば評価されるのか分からない」といった感覚が、離職を早める引き金になっているのです。
この課題に対し、オンボーディングの充実は有効な打ち手となります。
事実、オンボーディング施策の整備によって定着率が最大82%まで改善したという海外調査もあり、その効果は数字にも表れています。
中堅・大企業の6割しか導入できていない実情
では、日本企業におけるオンボーディング導入の実態はどうでしょうか?
以下の表は、国内におけるオンボーディング施策の普及状況を示しています。
企業規模 | オンボーディング実施率 |
---|---|
全体平均 | 約60.9% |
従業員1,000名超の大企業 | 約86.5% |
中堅・中小企業 | 約40%未満(推定) |
このように、大企業では比較的浸透している一方で、中堅企業以下では未導入が多数派です。
その要因としては、以下のような事情が考えられます。
- 教育体制のノウハウが不足している
- 担当者の工数・リソースが足りない
- 「何をすればいいか分からない」という導入初期の壁
つまり、オンボーディングが重要と分かっていても、実行に移す仕組みがないというのが中堅企業のリアルなのです。
営業職に特化した育成課題とは
オンボーディングの中でも特に対応が難しいのが営業職の新人教育です。
営業職は商材理解・競合比較・提案トーク・顧客対応など、習得すべき内容が非常に多岐にわたります。
また現場では、以下のような課題が顕在化しています。
- OJTが属人化しており、教育の質がばらつく
- 理解度を測る仕組みが乏しく、成果の定量評価が困難
- クイズやテストを作る余裕がない
そこで今、注目されているのが、社内教材からAIによってクイズを自動生成する仕組みです。
とくに営業職では、知識の定着と再確認を目的としたミニテスト形式が有効であり、「理解していないポイント」が可視化されることで、育成の精度が格段に向上します。
つまり、営業職こそ「オンボーディング+AI」の恩恵を最も受けられる対象であるといえるのです。
なぜ今、GPTsなのか?
従業員オンボーディングの現場では、教育コンテンツの整備や理解度の可視化が急務となっています。
特に営業職のように専門知識と対人対応力が求められる職種では、研修の属人化や教材の未整備が育成ボトルネックとなっているケースも多く見られます。
そこで注目されているのが、ChatGPTのGPTs機能を活用したクイズ生成ボットです。
汎用AIツールとは異なり、GPTsはChatGPT内で完結し、設計・管理・運用が直感的に行えるのが特長です。
この章では、GPTsがオンボーディングの課題にどのようにフィットするのか、3つの観点から掘り下げていきます。
自社教材から数分でクイズ生成できる強み
研修担当者にとって、「テスト問題を作る」という作業は想像以上に重たいものです。
質問の粒度、選択肢の作成、答えの正確性チェックなど、気を配るべきポイントが多いため、つい後回しにされがちです。
そこで活用できるのが、GPTsによるクイズ自動生成です。
自社マニュアルやFAQをナレッジファイルとしてアップロードし、GPTsに適切なプロンプトを設計すれば、数分で実践的な設問が生成可能です。
この強みが特に有効となるのは以下のような場面です。
- 商材数が多く、内容を網羅的に出題したい場合
- トレーナーが複数人いて、教育方針を統一したい場合
- 新人によって理解度にばらつきがある場合
また、テスト結果は新人本人だけでなく、管理者にとっても「どこでつまずいているか」を把握するヒントになります。
つまり、GPTsは単なる作問ツールではなく、教育の質そのものを底上げする仕組みとして機能するのです。
GPTsなら知識漏洩リスクを最小化できる
AIを業務活用するうえで避けて通れないのがセキュリティと情報管理の懸念です。
特に人材育成に使う教材には、社内ノウハウや製品仕様、過去事例などの機密性が高いデータが含まれがちです。
多くの企業では、外部API型のAIツールを導入する際に次のような不安を感じています。
- アップロードしたデータが外部サーバに保存されないか
- 学習データに使われてしまうのではないか
- 社内規定や契約に違反しないか
この点、GPTsはChatGPTの一機能であり、アップロードされたファイルやチャット履歴が保存・再利用されることは基本的にありません。
さらに編集画面の「追加設定」にあるモデル改善オプション(初期ON)を明示的にOFFにすることで、企業側でデータ使用の制御が可能です。
このようにGPTsは、企業が求めるセキュリティ要件を満たしやすく、安心してクイズ自動化に活用できるプラットフォームといえます。
他AIツールと違い、導入がシンプル
GPTsの魅力は、導入の敷居が低いことにもあります。
多くのAI活用ツールは、外部サービスとの連携やAPIキー設定、ユーザー認証、データ送受信の構築など、初期設計にエンジニアリングが必要です。
一方GPTsでは、ChatGPTの画面内で以下の操作だけで完結します。
- GPTs編集画面を開く
「マイGPT ▸ GPTを作成する」からアクセス。 - プロンプト・ナレッジファイル・機能設定を追加
専用UIで直感的に登録可能。 - 保存して公開する
共有リンクで関係者に配布。
つまり、専門知識がなくても業務担当者レベルで完結できるのが大きなポイントです。
この手軽さが、PoC(概念実証)や小規模チームへのスモールスタートを後押しし、「まず使ってみる」文化の定着にもつながっていきます。
GPTsによるクイズ自動生成のメリット
GPTsを活用したオンボーディング施策は、単なる作問支援にとどまりません。
「育成工数の削減」から「新人理解度の可視化」、「定着率の改善」まで広範なメリットをもたらし、人事部門や現場教育担当者の負担を根本から軽減してくれます。
この章では、GPTsによるクイズ自動生成の導入で得られる3つの代表的な効果について詳しく解説します。
教材整備の手間を削減しトレーナー負担を軽減
新入社員教育では、教材の整備とテスト作成が大きな工数を占めます。
とくに営業職では、製品情報やトークスクリプトの更新頻度が高く、その都度教材を修正し、確認テストも作り直す必要があるのが現状です。
この点、GPTsを活用することで以下のような変化が生まれます。
- 資料を元にしたクイズ生成が自動化できる
ナレッジファイルをアップロードし、GPTsに設問形式のプロンプトを与えるだけで数分でクイズが生成可能。 - 設問の粒度や出題範囲を調整しやすい
同じマニュアルから「初級/中級」など複数バリエーションのテスト作成も容易。 - 教材更新への追従も迅速に対応可能
内容変更があった際もファイルを差し替え、再生成するだけで最新状態を維持。
つまり、属人化した研修設計の負担を分散・自動化できるという点で、教育現場にとって大きな意味を持ちます。
理解度テストで新人育成の精度が向上
研修内容をただ受けるだけではなく、「どこまで理解できているか」を明確に測れる体制があるかどうかで、教育の成果は大きく変わります。
GPTsによるクイズ出題を取り入れることで、新人の習熟度を定量的に測定できるようになります。
- 知識の抜け漏れを早期に発見できる
回答傾向から「苦手分野」を可視化し、フォローアップの対象を明確化。 - 学び直しがしやすい学習環境がつくれる
クイズのフィードバック機能を使えば、その場で誤答の解説も自動で提供可能。 - 新人ごとの成長度合いを記録に残せる
テスト履歴を残しておけば、研修前後のスコア比較も簡単に行える。
このように、一人ひとりに合った教育設計が実現できるという点で、GPTsは「育成の質」そのものを底上げする有効な手段となります。
生産性・戦力化スピードを数値で証明
「GPTsを導入したら、どれほどの効果があるのか?」という疑問に対しては、すでにいくつかの定量データが示されています。
効果指標 | 数値実績(国内外調査) |
---|---|
オンボーディングによる定着率向上 | 最大 +82% |
生産性向上(研修完了後) | +70%以上 |
中途営業職の戦力化期間 | 9ヶ月 → 3ヶ月に短縮 |
また、トレーナーの作業時間に関しても、
- 教材作成時間を1/3以下に削減
- テスト結果の集計・分析も自動化により月間10時間以上の削減
といった事例もあります。
これらの数値は、GPTsによるクイズ生成が単なる「便利機能」ではなく、投資対効果の高い育成施策であることを裏付ける重要な証拠です。
GPTs実装までの5ステップ
ChatGPTのGPTs機能を活用したオンボーディング用クイズチャットボットの導入は、想像以上にシンプルで実践的です。
ここでは、非エンジニアでもスムーズに取り組めるように、「5つのステップ」に分けて実装の流れを解説します。
各ステップは、ChatGPTの画面操作だけで完結する内容が中心です。
必要なファイルや設定項目を順に整理することで、誰でも即座に始められる構成となっています。
1. GPTs編集画面へのアクセス方法
まず始めに行うのは、GPTsの編集画面を開く準備です。
ChatGPTのトップ画面右上にある「アカウントアイコン」から以下の順で進みます。
- マイGPTにアクセス
プルダウンメニュー内に表示される「マイGPT」を選択します。 - 「GPTを作成する」をクリック
これで編集画面に遷移します。ブックマーク登録しておくと今後の編集がスムーズです。 - 作成済みGPTの一覧もここで管理可能
過去に作成したGPTsは、時系列順に並んでおり、再編集も可能です。



この画面が、プロンプト設定・ナレッジ登録・機能ON/OFFのすべての起点となります。
なお、GPTsの作成には有料プラン(Plus/Pro/Team/Enterprise)への加入が必要な点に注意してください。
2. システムプロンプトの設計とコツ
GPTsの「頭脳」となるのがシステムプロンプトです。
ここでの設計がクイズの質や回答の一貫性に大きく影響するため、以下の観点を押さえましょう。
- 想定ユーザーと目的を明記する
例:「営業職の新人が製品知識を復習するためのクイズを出題してください」 - 回答形式やトーンも具体的に設定
「選択肢形式で1問ずつ」「解説付き」「カジュアルな語り口で」など。 - 不要な回答を防ぐ条件も記載
「技術的な解説は避ける」「会社の用語だけを使う」など制限条件も重要です。
プロンプトの分量は最大8,000文字まで入力できますが、必要に応じてナレッジファイル側に情報を分散すると管理が容易になります。
以下は、営業部門向けオンボーディングクイズを生成するGPTsに適したシステムプロンプトの例です。
人事担当者が社内マニュアルをもとにクイズ形式で新人教育を進めたいというニーズを想定しています。
role: >
あなたは営業職の新人教育に精通した企業内教育アドバイザーです。
ユーザーの目的達成をサポートするAIアシスタントとして振る舞ってください。
output_style:
tone: "フレンドリー"
structure: "段落形式"
length_preference: "簡潔に"
language_level: "初心者向け"
behavior_rules:
- "不確かな情報は断言しない"
- "ChatGPTの能力範囲外のことは明言する"
- "差別的・攻撃的な表現は禁止"
knowledge_scope:
include_topics:
- "オンボーディング用クイズの生成"
- "社内マニュアルの要約と要点抽出"
- "選択式クイズの作成と解説"
exclude_topics:
- "コード実装"
- "APIの開発や設計"
response_policy:
priority_order:
- "ユーザーの直接指示(チャット内)"
- "このシステムプロンプト"
- "ナレッジファイルの内容"
fallback_strategy: >
回答不能な場合は、無理に推測せず「情報が不十分です」と伝えること。
clarification_policy: >
ユーザーの指示が曖昧な場合は、勝手に解釈せず「〜という意味でしょうか?」と必ず確認してください。
default_output_format: >
必要に応じて以下のテンプレートに従って出力してください:
「質問 → 選択肢(A〜D) → 正解 → 解説」の形式で、1問ずつ出力してください。

3. 機能設定(画像・コード・Web検索・Canvas)
GPTsには、4つの主な機能ブロックがあります。
ボットにどんなことを「させたいか」に応じて有効化してください。
機能 | 初期状態 | 推奨設定(本プロジェクト) |
---|---|---|
Web検索 | ON | OFF(教材内で完結するため) |
Canvas(画像生成) | ON | OFF(出題には不要) |
画像生成(GPT-4o Image) | ON | OFF(今回は未使用) |
コード・データ解析(Code Interpreter) | OFF | ON(CSV対応が必要な場合) |
「画像や図解を使った設問」や「スコアを数値解析する機能」を盛り込みたい場合は、該当機能をONにすることで対応可能です。
ただし、チェックの入れすぎは動作不安定の原因になるため、必要最小限を心がけましょう。
4. ナレッジファイルのアップロードと構造化
GPTsにクイズを生成させるには、元となる教材データ(ナレッジファイル)が必要です。
以下の手順でアップロード・構造化を行います。
- 「知識 ▸ ファイルをアップロードする」から追加
最大20ファイルまで設定可能で、1ファイルは最大512MBまで対応。 - 推奨形式は.docx/.pdf/.csv/.txtなど
教材がテキスト中心であれば.docxか.txtが扱いやすく、構造が複雑な場合は.csv形式も有効。 - アップロード後は編集不可のため、事前に内容を整えること
再アップする際は、既存ファイルを削除して再登録が必要です。
また、ナレッジファイルを用いた出題を可能にするには、「コードインタープリターとデータ分析」の機能をONにする必要があります。


5. アクション(API機能)の活用準備
クイズチャットボットをさらに高度化したい場合、外部サービスとの連携=「アクション」機能を使うことも検討できます。
たとえば以下のようなケースです。
- 回答結果をGoogle Sheetsに自動記録
- Slackに理解度スコアを通知
- Notionに個別進捗をログ
GPTsの編集画面内「アクション ▸ 新しいアクションを設定する」から、APIエンドポイントのURL・メソッド・認証トークンなどを登録すれば、連携が可能になります。


ただし、アクション設定はやや技術的な知識が必要なため、まずは「クイズ生成」機能をGPTsだけで完結させることを優先し、アクション導入は段階的に進めるとよいでしょう。
セキュリティと法令対応のポイント
GPTsを業務利用する際に最も気になるのが、セキュリティリスクと法令順守です。
特に従業員オンボーディングのように「人に関する情報」を扱う場面では、個人情報や社内ノウハウを安全に取り扱えるかどうかが、導入可否を左右する判断基準となります。
この章では、GPTs導入時に企業が考慮すべき主要なセキュリティポイントを3つの観点から整理します。
個人情報保護法と社内規程の整備
まず優先すべきは、法的な基盤づくりです。
GPTs自体が日本の個人情報保護法(改正個人情報保護法)に違反する機能を備えているわけではありませんが、「GPTsに投入する情報の性質」次第で違反リスクは生まれます。
たとえば、以下のような情報は注意が必要です。
- 氏名・社員番号など特定個人を識別できる情報
- 評価履歴や適性診断などのセンシティブな人事データ
- 営業ノウハウ・商品マニュアルなどの社外秘資料
これらの取り扱いにおいては、社内のAI利用ポリシーやデータ分類基準を明文化することが不可欠です。
といったルールを定めておくことで、社内監査や監督官庁からの指摘にも対応しやすくなります。
モデル改善設定のON/OFF管理
GPTsを作成・編集する際、画面下部にある「追加設定」内のチェックボックスにも注意が必要です。
ここに表示される項目が、
「GPTでの会話データを使用してモデルを改善する」
という設定で、初期状態ではONになっています。
このチェックが有効なままだと、GPTsを通じて入力された会話内容が、OpenAI側のモデル改善用途に使われる可能性があります。
そのため、業務データや教育資料をGPTsに入力する際は、
- この設定を明示的にOFFに切り替える
- ナレッジファイル追加後に再確認する
- GPTsの導入マニュアルに「OFF推奨」を記載する
といった対応が求められます。


特に社員の学習データやフィードバックがGPTsに蓄積されないようにするためには、このチェック1つの設定がリスク制御のカギとなります。
Chatログ非保存の前提と安心運用
GPTsでは、チャット履歴の自動保存やエクスポート機能が備わっていません。
これは逆に、以下のような安全性をもたらす要因にもなっています。
- 「会話データはセッション内でのみ保持」
再起動すれば内容は消えるため、ログから情報が漏れる心配がない。 - 「回答ログをエクスポートする機能が存在しない」
第三者が誤って共有してしまうリスクも最小化されている。 - 「ファイル保存や転送先がユーザー側で明示的に選べる」
サーバ側での自動送信や分析処理は行われない設計。
つまり、GPTsは初期状態で「情報を保持しない設計」がされており、オンボーディングのような業務フローにも適した安心感を提供してくれます。
一方で、回答結果の記録や活用を行いたい場合には、別途ログ管理システムや外部連携(アクション機能)の設計が必要になるため、用途に応じて明確な区分を設けることが重要です。
実運用と継続改善のヒント
GPTsを活用したクイズ生成チャットボットは、構築して終わりではありません。
運用を通じた定着率の向上や生産性改善を目指すには、「活用データの分析」と「柔軟な改善」が不可欠です。
この章では、GPTsを用いたオンボーディング支援を継続的に最適化するための3つの具体施策を紹介します。
定着率・生産性KPIのモニタリング
オンボーディング施策の効果を可視化するには、定量指標を設けて定期的に評価することが重要です。
特に営業職においては、下記のようなKPIをもとに、導入前後での変化を追いましょう。
指標項目 | 具体的な評価内容 |
---|---|
離職率 | 入社3ヶ月以内・6ヶ月以内の離職者数の推移 |
クイズ正答率 | 新人の理解度変化、再テスト時の伸び率など |
初受注までの期間 | 営業職が成果を出すまでのリードタイム短縮 |
教育コスト | トレーナーの教材作成や研修準備時間の削減効果 |
これらのデータは、GPTsの回答ログそのものではなく、外部ツール(GoogleフォームやExcel集計)と連携して収集する運用が一般的です。
特に「初受注までの平均期間短縮」は、ROI指標として経営層にも伝わりやすいポイントとなります。
トレーナー・新人からのフィードバック活用
数値指標に加えて、現場の声も継続改善の大きなヒントになります。
運用中は、次のような観点で意見を集めていきましょう。
- 新人側の視点
「設問の難易度は適切か」「解説が分かりやすかったか」「繰り返し学習したい形式か」 - トレーナー側の視点
「フォローすべき社員が把握しやすくなったか」「教材更新のしやすさ」「全体の教育負荷軽減度」
特に新人は、初めての研修体験としてGPTチャット形式に戸惑うこともあるため、自由記述形式で本音を拾う場を設けると効果的です。
トレーナーからの意見は、業務フローにどれほど溶け込んでいるか、他職種への転用可能性などの判断材料にもなります。
クイズ更新やUI改善によるPDCAサイクル
GPTsの強みは、ナレッジファイルの差し替えやプロンプト調整が容易な点です。
これを活かして、以下のようなPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回しましょう。
- Plan(計画)
新人のつまずきやすいテーマを分析し、設問カテゴリを拡充。 - Do(実行)
新しい問題形式(穴埋め・○×・事例選択など)を試験導入。 - Check(評価)
テスト結果・コメント・KPIの変化を収集し、有効性を確認。 - Act(改善)
ナレッジ構成やUI設計(設問表示数、応答トーンなど)をチューニング。
また、操作画面のUIやチャットボット名・アイコンを新人向けに親しみやすくカスタマイズすることで、利用率の向上にもつながります。
GPTsは柔軟性が高いため、「一度作って終わり」ではなく「育てていくプロダクト」として捉えることが、導入後の成果を最大化する鍵となります。
まとめ
オンボーディングの質が人材の定着と生産性に直結する今、GPTsを活用したクイズ生成ボットは現場の即戦力ツールとして注目されています。
教材作成や理解度評価の自動化により、教育担当者の工数を削減しつつ、新人一人ひとりの習熟度を可視化できるのが最大の魅力です。
また、GPTsはChatGPT内で簡潔に構築できる仕組みであり、セキュリティ面や法令対応の観点でも優れた設計を備えています。
「つくって終わり」ではなく、フィードバックを活かして改善を重ねられる運用性もポイントです。
中堅・大企業に限らず、新人教育を強化したいすべての組織にとって、GPTsはすぐにでも試す価値のある選択肢と言えるでしょう。