当記事の要点
- ChatGPTのGPTsを使えば検査結果の説明工数を最大60%削減できる可能性がある
- 医師法・個人情報保護法への配慮を徹底することで現場導入が現実的になる
- ナレッジやプロンプト設計、セキュリティの工夫により高精度な説明生成が実現できる
- 導入後はKPIとPDCAに基づく改善サイクルでスケーラブルな運用が可能となる
こんにちは、FreedomBuildの駒田です。
健診や外来で受け取る検査結果票、専門用語ばかりで内容がわかりづらいと感じたことはありませんか?
「この数値は何が問題?」「どう改善すればいいの?」と疑問を抱いても、医師の説明は時間が限られ、聞きそびれてしまうことも。
もしChatGPTのGPTsを使って、あなたの検査結果をわかりやすく噛み砕いて説明してくれるボットがいたらどうでしょう。
病名の断定は避けながらも、数値の意味や生活改善のヒントを示してくれたら、それだけで安心感が生まれます。
本記事では、そんなGPTsを活用した医療検査結果の説明ボットの作り方を解説し、合わせてGPTsに設定するプロンプトの例もご紹介します。
患者の不安を軽減しつつ、医師やスタッフの負担も減らせる——医療現場の両者にメリットをもたらす仕組みです。
検査後の疑問が「自分で理解できる」形に変わる世界を、一緒に覗いてみましょう。
まずは、いま検査説明が抱える問題点から整理していきます。
検査結果説明に潜む3つの構造課題
検査や健診を受けたあと、結果票を見ても意味がわからず戸惑った経験はありませんか?
医療現場では、患者の理解を深めたいという思いとは裏腹に、結果説明の方法や体制に多くの課題が残されています。
日本では2022年度、特定健診の受診者数が約3,017万人(厚生労働省)に達するなど、検査需要は年々増加傾向です。
しかし、結果の通知や説明方法は旧態依然としており、患者と医療従事者の双方に負担が集中しているのが実情です。
説明不足による患者側の混乱
多くの患者は、検査項目の専門用語に不慣れです。
特に高齢の受診者や初めて検査を受ける人にとって、数値と基準の意味を正しく理解するのは困難です。
- 時間不足による簡略な説明
診察時に1人あたり5分未満の説明しか受けられないことも - 用語が専門的すぎて内容が把握できない
「中性脂肪」「HbA1c」などの用語の背景まで伝わっていない - 質問の機会が少なく、誤解したまま放置されやすい
「正常値じゃないけど様子見でいいの?」といった不安が残る
このまま放置すると、患者の生活改善行動が起きず、数値悪化や再検査のリスクにつながります。
医療従事者の説明業務が圧迫
医師や保健師は、限られた時間内で大量の患者に対応しています。
とくに外来での説明や健診結果の返却時は、説明業務だけでスケジュールが埋まってしまうケースもあります。
- 1日20人への説明に100分以上を要する
医師1人あたりの説明時間が蓄積されていく - 説明内容の個人差が大きく、属人化している
「どこまで説明するか」が担当者に依存してしまう - 教育が追いつかず、新人スタッフが不安を抱えやすい
結果票の読み方が曖昧で、毎回質問が発生する
これらは医師の業務負荷を上げる要因となり、結果として医療サービスの質の低下にもつながります。
アナログな通知手段にかかるコスト
検査結果の通知は今も紙媒体の郵送が主流です。
一見すると丁寧な手法に見えますが、実際には膨大な費用と労力が発生しています。
- 年1万件規模で数百万円単位の費用が発生
印刷・封入・郵送すべてがコスト要因 - 作業時間と人員を確保する必要がある
繁忙期にはアルバイトを臨時雇用することも - 電子カルテと連携した患者向けサービスが未整備
病院では68.0%、診療所では55%超が電子カルテを導入(厚労省2023年)
しかし、患者向けのポータル整備はまだ限定的
こうした状況が続けば、デジタル化の波から取り残され、業務全体の非効率化を招きかねません。
既存施策の中にも電子カルテ導入など前向きな動きはありますが、それだけでは説明の質やスピードは改善しません。
この課題をどうすれば打破できるのでしょうか?
次章では、GPTsを活用した現実的な解決策を提示します。
GPTsで変わる検査説明のスタンダード
医療現場の説明業務における時間的・認知的な負担を解消するには、ChatGPTのGPTs機能を活用した自動応答システムが有効です。
患者の理解度を高めつつ、スタッフの業務効率も改善するための新しい説明手段として、GPTsは大きな可能性を秘めています。
従来手法との違いを可視化する
これまでの検査結果説明は紙や対面に依存しており、再確認や補足説明が難しいという課題がありました。
GPTsを使えば、いつでもどこでもわかりやすい説明を引き出せるため、継続的な理解と行動変容につながります。
従来のやり方 | GPTs活用時 |
---|---|
紙や口頭が中心で質問しにくい | チャット形式で気軽にQ&Aが可能 |
医療従事者が都度説明に時間を取られる | 自動生成された文面で時間削減 |
結果票の理解不足で行動変容が起きにくい | わかりやすい表現で改善意識向上 |
たとえば、血糖値やコレステロール値の説明において「この数値は○○のリスクがある」といった定型文を、患者の検査値と照らし合わせながら自動生成できる点が魅力です。
工数削減と説明の質向上を両立
GPTsを導入することで、検査結果の説明にかかる時間を最大60%削減できる可能性があります。
これは、ChatGPTによる文面生成が医師や看護師の説明工数を大幅に代替できるためです。
さらに、説明文がテンプレートベースで一貫性を持つため、属人的な対応を減らすことにもつながります。
患者側でも、何度も同じ内容を読み返せるため、受診後のフォロー行動(食事改善や再診)を促しやすくなります。
たとえば、説明文の末尾に「今後の食生活で気をつけたいポイント」などのメッセージを追加することで、理解だけでなく行動にも結びつきます。
懸念される導入ハードルとその対策
とはいえ、実際にGPTsを医療現場で活用するにはいくつかの懸念もあります。
代表的な声とその対処法を以下に整理します。
- 導入費用がかかりそう
GPTsは無料プランでも使用可能ですが、作成するにはPlus以上のプランが必要です。とはいえAPI課金のような従量制ではないため、初期費用が明確かつ低コストです。 - セキュリティが不安
患者情報は匿名化した上で使用し、GPTsの「モデル改善」設定をOFFにすることで、安全性を担保できます。詳細は後章で解説します。 - 診断行為とみなされないか心配
GPTsはあくまで説明補助に留め、最終判断は医師が行う設計にすることで、医師法の範囲内に収めることが可能です。
これらの懸念点も、適切な設計と運用ルールによってクリアできるケースがほとんどです。
患者が結果を理解できるようになり、医療従事者の時間的余裕が生まれる。
その両方を叶えるGPTs導入の手順を、次章で5つのステップに分けて詳しく紹介します。
GPTsでつくる検査説明ボットの構築手順
ChatGPTのGPTs機能を活用して、医療検査結果を自動で解説するボットを構築するためのステップを5つに分けて解説します。
1つずつ着実に設定していけば、専門知識がなくても実用レベルの仕組みを整えることが可能です。
Step 1: GPTs編集画面にアクセスする
まずはChatGPTにログインし、右上のアイコンから「マイGPT」を選択します。
表示される一覧画面右上の「GPTを作成する」ボタンをクリックすると、GPTs作成画面が開きます。



以下の画面が、カスタムGPTを構築するためのメインインターフェースです。

無料プランでは作成できないため、Plusプラン以上の加入が必要です。
ブラウザのブックマークに「マイGPT」ページを保存しておくと、次回以降の編集がスムーズになります。
Step 2: システムプロンプトを設定する
作成画面では、最初にGPTsの名前・説明・システムプロンプトを入力します。
システムプロンプトとは、GPTsに対して「どのようにふるまうか」「どう説明するか」を定義する指示文です。
ここでの注意点は、医師法との整合性を保つことです。
病名や診断をGPTsが断定するのはNGのため、「一般論」や「基準値の背景説明」に留めるよう記述を工夫しましょう。
システムプロンプトを細かく書きすぎて8,000文字制限を超え、保存できなくなったケースがあります。
→ ガイドライン文はナレッジファイルに移すと安定します。
以下は、医療検査結果を対象としたGPTsボットに最適なシステムプロンプトの本格仕様です。
検査結果の意味をやさしく、正確に伝える役割を担います。
role: >
あなたは「検査結果説明支援」に特化した医療コミュニケーションアシスタントです。
健診や医療機関で実施された各種検査の数値・項目名・基準値・単位などの情報をもとに、
一般の患者が理解できるやさしい日本語で解説を提供してください。
表現はあくまで教育・参考目的にとどめ、診断や疾患の示唆は絶対に避けてください。
出力する内容は医師の補助ツールとして使われる想定であり、
文章の末尾には「※最終的な判断は主治医の説明をご確認ください」と明記してください。
output_style:
tone: "やさしく丁寧"
structure: "段落+箇条書き"
length_preference: "必要に応じて300〜500文字で"
language_level: "医療知識のない一般患者向け"
behavior_rules:
- "検査値の意味を基準値と比較してわかりやすく説明する"
- "絶対に病名や診断名を出さず、あくまで一般的傾向を伝える"
- "感情を煽る表現や脅迫的語調は一切使用しない"
- "専門用語にはふりがなまたは簡単な言い換えを添える"
- "必ず『主治医の判断が最終です』という注記を加える"
knowledge_scope:
include_topics:
- "生化学・血液・尿検査などの主要検査項目と基準値"
- "JAHISの検査項目コードと単位"
- "健康診断における指導区分(正常・注意・要受診など)の定義"
- "患者教育で使用される一般的な健康アドバイスの表現"
exclude_topics:
- "病名・診断・治療提案"
- "医療機器の選定・処方判断"
- "患者の症状や病歴に基づいた医学的判断"
response_policy:
priority_order:
- "ユーザーの直接指示(チャット入力)"
- "このシステムプロンプト"
- "アップロードされたJAHIS・検査解説ナレッジファイル"
fallback_strategy: >
情報が不十分で説明できない場合は、
「この数値だけでは判断できません。主治医の説明をお聞きください」と明示し、
無理に推測せず回答を控えてください。
clarification_policy: >
数値や検査項目が曖昧だった場合は、
「〜という検査項目のことを指していますか?」と確認し、
ユーザーが何を知りたいか明確化してから説明を行ってください。
default_output_format: >
以下の構成で説明文を出力してください:
1) 検査項目名の簡単な定義
2) 入力された検査値が基準値とどう違うかの説明
3) 一般的な背景知識(生活習慣との関連など)
4) 「※本内容は参考情報です。必ず主治医の説明に従ってください。」という注記
フォーマットは箇条書きや短い段落を交えて、読みやすく構成してください。

Step 3: 必要な機能を設定する
「機能」タブでは、GPTsに搭載する各種オプションを選べます。
- ウェブ検索
調べ物系には便利だが、医療用途では誤情報防止のため基本OFF推奨。 - キャンバス
フロー図や構成案をGPTsが視覚的に出力できる機能。 - 4o 画像生成
検査項目のイメージ図を生成する際などに利用。 - コードインタープリターとデータ分析
ExcelやCSV形式の検査データを解析する際に必須。特にLIS出力ファイルの読込に有効です。
これらの設定は、ボットの使い方や目的に応じて適宜ON/OFFを切り替えることで最適化できます。
Step 4: ナレッジファイルをアップロードする
GPTsの知識を補完するには、「知識 ▸ ファイルをアップロードする」から基準値や検査項目に関する資料を追加します。
推奨形式はCSVまたはPDFですが、次のルールを守る必要があります。
- CSVはUTF-8で保存し、カンマ区切りにする
- 数値にカンマ(,)を使わない(例:7,000 → 7000)
- 1ファイル最大512MB、最大10ファイルまで同時アップロード可能
アップロード後は、機能設定タブで「コードインタープリターとデータ分析」をONに切り替える必要があります。


なお、一度アップロードしたファイルは直接編集できないため、修正時は削除→再アップが必須です。
Step 5: アクション機能で連携を追加する
「アクション ▸ 新しいアクションを設定する」からは、GPTsと外部データソースの接続が可能です。


例えば以下のようなAPI連携が実現できます。
- 院内のLISまたは電子カルテから検査結果を取得
- 検査値をGPTsに送信
- 解説文を生成し、患者ポータルに表示
JSON形式で検査値を渡し、テンプレートに沿った説明文を生成させる形が主流です。
実装時、説明文に禁則ワード(例:「疾患名の断定」)が混入した場合は、プロンプトを改修するか、ルールエンジンでフィルタをかけて対応できます。
以上で、GPTsによる説明ボットの構築は一通り完了です。
次は法規制・個人情報保護の観点からのセキュリティ設計について解説します。
GPTsの現場導入で得られる3つの成果
実際にChatGPTのGPTsを医療現場へ導入すると、どのような変化が起こるのでしょうか。
ここでは導入後の3つの活用シナリオを通じて、業務効率化や患者満足度向上に直結する成果を具体的に紹介します。
受付対応の負担を軽減する「カスタマーサポートボット」
従来、検査結果に関する問い合わせは電話や対面での対応が主流でした。
その結果、受付や看護スタッフが1日3時間以上の対応に追われることも。
GPTsを導入すると、患者が自宅やスマホから24時間いつでも質問可能な環境が整います。
たとえば「中性脂肪の基準値ってどれくらい?」「この数値は大丈夫?」といった質問に即時返答できます。
導入後は以下のような変化が起きました。
- 導入前:1日3時間の電話応対
- 導入後:1日1時間以下に短縮(約66%削減)
結果、スタッフは本来の業務に集中でき、対応の質も安定しました。
研修ツールとしての応用で指導の標準化を実現
新人スタッフやパートタイマーは、検査項目の解釈に不安を抱きがちです。
GPTsを社内研修ツールとして活用することで、知識の習得を効率化できます。
たとえば、以下のようなプロンプトを使います。
HbA1cが基準値より高い場合、患者にどんな生活指導をすればいい?
このように聞けば、GPTsが丁寧な指導例や注意点を即座に提示します。
その結果、属人化を避けた説明の標準化が可能になりました。
さらに、複数スタッフの教育に一貫性が生まれ、「この数値の説明は人によって違う」といった現場の混乱も回避できます。
検査結果の自己学習支援で患者の理解度が向上
検査結果を受け取った患者自身が内容を理解し、納得して行動に移せるかどうかは、医療の質に直結します。
GPTsを導入することで、患者は「なぜこの数値が高いのか」「何を改善すべきか」を自分の言葉で受け止められるようになります。
とくにスマホやタブレットで利用できるチャット形式は、若年層との相性も抜群。
外来説明の場面でも「すでに把握している」患者が増えることで、説明がスムーズになります。
2024年のGO100健診DXレポートでは、結果票のデジタル化により問い合わせ件数が約40%減少した事例も紹介されています。
このようにGPTsの実運用は、業務効率化と患者エンゲージメントの両立を実現します。
ただし医療データを扱う以上、情報セキュリティや法的リスクへの配慮は欠かせません。
次章では、GPTs導入におけるセキュリティ対策とその実践ポイントについて詳しく解説します。
GPTs導入時の情報セキュリティ対策ガイド
GPTsを医療業務に活用する際は、患者情報を扱う特性上、万全なセキュリティ対策が不可欠です。
医療データは個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、漏えいや誤運用が起これば深刻な問題に発展します。
ここでは、GPTs導入時に留意すべき主要なリスクと、それに対する具体的な対策を紹介します。
個人情報漏えいを防ぐ匿名化と設定管理
最も基本的な対策は、入力するデータを匿名化することです。
氏名・生年月日・住所など、個人を特定可能な情報は、GPTsに送信しない運用ルールを定めましょう。
加えて、GPTs編集画面下部にある「GPTでの会話データをモデル改善に使用する」設定は、初期状態でONになっています。
これを必ずOFFに切り替えることで、やり取り内容が外部学習に使われるリスクを回避できます。


外部サーバー(たとえばOpenAI)で処理される場合は、機密保持契約(NDA)やデータ処理契約(DPA)の締結も検討すべきです。
可能であれば、国内リージョンに限定されたクラウド環境(例:Azure OpenAIの東日本リージョン)の利用も有効な手段です。
AIの誤出力による誤解を防ぐ制御策
GPTsは高い言語生成能力を持つ一方で、誤情報や過剰表現を生成してしまうリスクもあります。
とくに医療分野では「この数値は糖尿病の疑いがあります」など、診断に近い記述があると医師法に抵触する可能性があります。
これを防ぐには…
- プロンプト内で「診断的表現は禁止」と明示する
- あらかじめ「生成してはいけない語句リスト」を定義し、出力時に検出フィルターをかける
- AI出力は必ず医師・検査技師が確認してから提供する運用にする
このようにプロンプト設計+人間のレビュー工程を組み合わせることで、安全性が大きく向上します。
管理画面と操作権限の制御による内部対策
GPTsの設定やナレッジファイルへのアクセスも、担当者を限定して管理することが重要です。
操作権限を与える際は、次のポイントを徹底してください。
- 管理者はWorkspace内で明示的に「Editor」権限を割り当てる(※チームプランの場合)
- ナレッジファイルの内容は外部公開せず、閲覧ログを記録する
- GPTsのアクセスは院内LAN限定またはVPN接続環境に限定する
- 管理端末には二要素認証(2FA)を必須化する
また、万一に備えて出力ログを保存・監査できる仕組み(ログトレース)を設けることで、内部不正や設定ミスの早期発見につながります。
下表は、GPTs運用における代表的なリスクと推奨される対策の一覧です。
リスクカテゴリ | 発生原因 | 推奨設定例 |
---|---|---|
情報漏えい | 氏名・住所などを含んだまま送信 | 入力の匿名化、モデル改善OFF |
誤解析 | 病名や疾患名の断定出力 | 禁止ワード設定+レビュー必須化 |
不正アクセス | 管理アカウントの漏洩 | 2FA導入、操作端末を院内に限定 |
操作ミス | 設定画面の誤更新や誤削除 | 操作ログ記録、権限分離 |
実施状況を確認するチェックリスト
対策がきちんと機能しているかを定期的に確認するために、以下のチェックリストを活用してください。
- 匿名化は徹底されているか
氏名・生年月日・保険証番号などがデータに含まれていない - 「モデル改善機能」はOFFになっているか
編集画面の最下部を確認 - ファイルアップロード後に意図せぬ共有が発生していないか
GPTsが意図せず「リンク共有」になっていないか確認 - 操作権限の管理が適切か
編集者が最小限に制限されているか、ログが残る環境か - GPTsの回答ログは安全に保存されているか
医療記録に準じた管理体制があるか
セキュリティ対策は「やりすぎ」なくらいがちょうどいい——それが医療情報を扱う現場の常識です。
次章では、こうした体制を継続的に保ち、改善していくための運用・改善ステップを紹介します。
継続運用で活きるGPTsの改善ステップ
GPTsを活用した医療ボットも、導入して終わりではありません。
本格稼働後の運用と改善が、サービスの信頼性やユーザー満足度に直結します。
この章では、マイルストーンの設計から改善プロセス、役割分担まで、継続運用の具体策を整理します。
30・60・90日で成長を見える化する
システム導入直後は、効果測定の節目をあらかじめ設けることが成功の鍵です。
それぞれのタイミングで何を観察すべきか、以下に整理します。
- 30日目:初期の使用感を確認
患者アンケートやスタッフのヒアリングで、違和感や不安点を洗い出す。
UI上の導線や表現の調整が主眼となります。 - 60日目:業務負担の定量的変化を計測
医師・検査技師の説明時間がどれだけ短縮されたかを数値化。
Google SheetsやNotionなどでログを自動集計しておくと効率的です。 - 90日目:成果を総括し、次のステップへ
全体的な運用指標を見直し、プロンプトやナレッジの改定案を洗い出す。
定着度合いによっては、患者向けの利用拡大や他診療科への展開も検討段階に入ります。
KPIを軸にした改善サイクルの構築
定量的な改善を続けるには、追跡可能なKPI(重要業績評価指標)を設定することが不可欠です。
以下に代表的な指標を紹介します。
- 問い合わせ対応時間
GPTs導入前後での1件あたりの対応時間を比較。
月次で削減率を記録しておくと傾向が見えます。 - 患者満足度スコア(CSAT)
チャット終了後のワンクリック評価や、紙アンケートの「理解できたか」回答率を活用。 - 医師の説明時間削減
1日あたりの説明件数×平均所要時間で計算。
削減できた時間を他の業務に再配分できているかも重要な指標です。
KPIは「改善の目的」そのものであるため、可視化ツール(例:Looker StudioやPower BI)を活用すると組織内で共有しやすくなります。
PDCAをチームで回す運用体制を整える
改善活動を形骸化させないためには、PDCAサイクルを可視化し、ツールと組み合わせて運用することが有効です。
- Plan(計画)
改善案をNotionなどで集約し、誰が何をいつまでに行うかを明記。 - Do(実行)
GPTsの設定やナレッジファイルを更新。更新内容はGitHubで履歴管理してもよいでしょう。 - Check(評価)
KPIをもとに定量的な検証。Slackで進捗を通知し、関係者と定期レビューを行うと◎。 - Act(改善)
問題点をテンプレートとして記録し、次回の計画立案に活用。改善の再現性が高まります。
担当ロールと工数を明文化する
継続運用では、「誰が何をやるか」が曖昧だと改善が進みません。
以下のように役割分担を明示することで、責任の所在が明確になり、属人化を防げます。
担当ロール | 主なタスク |
---|---|
医師 | GPT出力内容のレビュー、最終チェック |
検査技師 | データ構造の確認、ナレッジファイルの更新 |
システム管理者 | GPTs設定の変更、アクセス権管理 |
CS/広報担当 | 利用告知、フィードバック収集 |
チャット内容の確認を医師が兼任していたが、業務量が多すぎてレビューが滞り、誤回答が配信されてしまった。
→ 対策:「ダブルチェック担当」を検査技師に割り当て、作業を分散。
継続的な改善は一朝一夕で成果が出るものではありませんが、仕組み化と役割明確化によって確実に進化します。
まとめ
医療機関の検査結果説明は、患者にとって健康課題と向き合う最初の大切な接点です。
そこへChatGPTのGPTsを活用したチャットボットを導入すれば、説明業務の工数削減だけでなく、患者の理解度と納得感の向上にも直結します。
本記事では、GPTsの特性と作成手順を丁寧に解説しながら、セキュリティ対策や運用改善の流れまでを体系的に整理しました。
紙からデジタルへ、属人的な説明から標準化へ──そんな変革を、GPTsが無理なく実現してくれます。
今こそ、検査説明の仕組みそのものを見直し、医療現場の質と効率を同時に高める第一歩を踏み出しましょう。